本を読むとバカになる?? ショウペンハウエル「読書について」 【本・感想】

2020年7月26日

世間では一般的に「本を読むことは良いこと」とされていると思います。

私も今では趣味で本を読んでいますが、最初はいい年にもなったし社会人として本を読まないとという使命感のようなもので読み始めました。
実際に本を読むと知識が得られたり、刺激を受けたりすることができると思います。

ですがこの「とにかく読書は良いことだ」という固定概念にNOという人がいました。
それが今回ご紹介する「読書について」を書いたショウペンハウエルです。

ショウペンハウエルはこの本の中で「本を読むとバカになる(意訳)」と書いています。

なぜ読書は悪いことになりうるのでしょうか?
そんな「読書について」をご紹介してきます。

こんな人におすすめ

・本をたくさん読む人、読書が趣味の人
・自己啓発のために本を読んでいる人、読もうと思っている人
・書き物をしている人

ショウペンハウエル

まずは著者のショウペンハウエルについて簡単にご紹介します。

アルトゥール・ショーペンハウエル(Arthur Schopenhauer)はドイツの哲学者です。
生きていた時代は1788~1860年です。

哲学について様々な本を書いており、彼自身一流の文章家でもあります。


ちなみにショウペンハウエル、ショウペンハウアー、ショーペンハウエルなど日本語での読み方は様々です。
綴りはSchopenhauerなのでショウペンハウアーが一番近い気もしますが。

構成・内容

構成は大きく以下の3つの章に分かれています。

思索     p5-24
・著作と文体  p25-125
・読書について p127-147


これ以外に訳注と翻訳者のあとがきが数ページあります。
簡単にどんな内容が書いてあるかは以下の通りです。

思索

「読書は自分の頭でなく他人の頭で考えることであり、多読は考える能力を奪ってしまう。」
というような内容が書いてあります。

大切なのは自分の頭で考える思索であり、多読は食べ物を食べて何も栄養を吸収しないような状態らしいです。
しかもプラマイゼロではなく考える能力を失わせるので、そういう人は本を読まない方がましとまで書いてあります。

また思索の中でも唯一価値があるのは、自分自身のために思索することであるそうです。
ハウツー本を書くための思索、いわゆる他人のために思索には何も意味がないと書いてありました。

とにかく合っているかどうか、凄い内容かどうかよりも、自分自身で考えることが大切なんだそうです。

著作と文体

上のページの配分からもわかるように、おそらくショウペンハウエルはここについて思うところがかなりあったのでしょう。
主に文章を書く人間に対する思いや考えがつづられています。

著作という点では読む価値のある本というのはほんの一部で、ほとんどが金のために書いているダメな文章だったり、昔の偉大な文章を自分の考えで勝手に部分的に切り取り劣化させたものである、という感じのことが書いてあります。

ここは私もブログを書いているので、本の紹介などで気を付けないといけないなと感じました。


文体に関しては日本人の私には正直あまりしっくりきませんでした。
というのも最近のドイツ語について嘆いている内容だったためです。
(最近と言っても19世紀ですが)

「最近のドイツの物書きはなんでも文を短くするのが良いと思い込んでおり、本来の意味を失わせている」というような内容が延々と例題とともに書かれています。

当時この美しくないドイツ語についてショウペンハウエルはかなり怒っていたんだと思いました。

読書について

この章でも「思索」に近い内容が書かれています。

「読書とは他人に考えてもらうことであり、他人の考えたことを反復的にたどっているに過ぎない。そのためほっとした気持ちにはなるが、次第に自分で考える力を失って行ってしまう。」

というような内容です。

この章で私がなるほどなと思ったのは、「重要な書物はいかなるものでも、続けて二度読むべきである。」と書いてあったことです。
「反復は研究の母なり。」とも書かれており、二度目に読むと書かれている事柄のつながりが良く理解でき、重要な発端の部分しく理解できるそうです。

大切なのはたくさんの本を読むことではなく、良い本をしっかりと自分で理解できるまで読むことなのではないかと感じました。

ショウペンハウエルが終始怒っている

私がこの本を読んだときに強く感じたのは「ショウペンハウエルずっと怒ってる」ということでした。
この表現が適切かどうかはわかりませんが、たぶんキレながら書いていたのではないかと思います。

というのもショウペンハウエルは文章を愛し、その強い思い故時代とともに変わっていく今の文章や、単に本をたくさん読むことがいいことだと思っている人が許せなかったのではないでしょうか。

にしても終始キレてます。

読みごたえと読み方

この本はページ数が少なく訳注やあとがきなどを入れても160ページないですが、かなり内容が濃いです。
おそらく元の文章が難しい言葉で書かれており、また古い本のため日本語訳されたこの本もかなり読むのに体力がいると思います。

こんなことを書くとショウペンハウエルにも怒られてしまいそうですが、読書について考えるには「思索」と「読書について」だけを読んでも十分意味があると思いました。

というよりも中間の「著作と文体」は文章を書く人やドイツ語に詳しい人でないとピンとこない上に、かなり内容が多く重複しているように感じるところも多かったためです。

まとめ

上でも書いたようにページ数に対してかなりの読みごたえのある本でした。
ですが読書が趣味の方や、自己啓発など自分のために本を読んでいる人にはかなりためになる内容が書かれていると思います。

本当に本を読んでいるだけでいいのか?そんなことを考えさせてくれる本でした。
またじっくり時間をかけて理解していきたいと思います。