多くの大企業が対応できない破壊的イノベーションとは クレイトン・クリステンセン「イノベーションのジレンマ」【本・感想】
「破壊的イノベーション」や「破壊的技術」という言葉をご存じでしょうか。
これはハーバードビジネススクールの教授、クリエトン・クリステンセンが提唱したものです。
今回は大企業が陥るジレンマ、破壊的イノベーションに関して書かれた本「イノベーションのジレンマ」をご紹介します。
内容・構成
この本では業界をリードする大企業が、市場の変化が訪れたときにそれに対応できずに地位を守れなくなるということに関して具体的な事例を通して分析し、対応していく方法を紹介しています。
この問題の難しいところは経営者の能力不足が原因ではなく、優秀な経営者が率いる大企業が数々失敗をしているというところです。
この本は10章構成となっており、前半は優秀な経営者がなぜ失敗をしてしまうのかという理由を、後半はこのジレンマを解決するための方法が書かれています。
持続的技術と破壊的技術
まずこの本の一番最初に説明されているのは「持続的技術」と「破壊的技術」の2つの技術についてです。
「持続的技術」とは現在ある技術の性能をアップさせた技術のことで、「破壊的技術」というのは今までの技術とは違った軸から出てくる技術のことです。
例えば自動車業界で考えると、ガソリン自動車の燃費を良くしたものは持続的技術、電気自動車は破壊的技術です。
破壊的技術は最初は今ある需要を満たせない性能のものがほとんどです。
(電気自動車の場合、バッテリーの関係で十分な距離を走れないなど)
ですが別の小さな市場で需要を見つけて成長し、最終的には持続的技術に追いついて市場を支配していくのです。
この破壊的技術がいつの時代も大企業の地位を脅かし、多くの大企業が失敗していった原因になります。
大企業のジレンマと破壊的技術
大企業は顧客と投資家に資源を依存しています。
なので顧客と投資家に売れる、利益が出ると思われた製品を作ることが企業の仕事となります。
ではどんな製品が売れる、利益が出ると思われるでしょうか。
それは現在売れている製品のハイエンドモデル(高性能モデル)です。
基本的に高性能のものに関しては粗利が高くなる傾向にあります。
売れているもので高性能なものであれば、顧客は喜んで買い、粗利もしっかりとれるという点から大企業は持続的技術に取り組んでいくのです。
一方、大企業で破壊的技術を研究、発売するには大きな壁があります。
大体の場合、大企業が破壊的技術を生み出すことは技術的には難しくありません。
ですが破壊的技術は最初はとても性能が低く、現在の市場の要求を満たせないのです。
実際多くの破壊的技術を売るためには新たな市場を探す必要があるのですが、新たな市場も最初はかなり小さいです。
市場が小さい、粗利がとれないため投資家からの評価も低く、大企業の中ではおざなりにされてしまうのです。
年間10%の成長を目標にするにしても大企業と小さな企業では金額が何桁も違うため、結果として小さな企業が破壊的技術を発展させていきます。
そのうち持続的技術が発展しすぎ需要を超えたときに、下から追い上げてくる破壊的技術にコスト面などで勝てなくなりすたれていってしまうのです。
このように破壊的技術を取り扱わなければならないとわかっていても、大企業は顧客と投資家に縛られているため、持続的技術を優先してしまう傾向にあります。
大企業が破壊的技術に対応するためには
本書では大企業が破壊的技術に対応するには、組織を切り離して独立した組織で取り組ませる必要があると書いてあります。
方法は子会社を設立して本体から切り離すか、もともと技術を持っている会社を買収するかです。
理由としては本体から切り離すことによって、上記の顧客と投資家の影響を受けないようにするためと、小さな売り上げ(利益)でも小さな組織であればそれが失敗とならないためです。
詳しくは場合分けがあり、一概にこの方法が正しいわけではないですが、大企業に働いてしまう見えざる力から切り離すことが必要だそうです。
まとめ
全体的に具体例が多く、また難しい言葉もちゃんと解説が入るので理解しやすかったです。
内容的には技術職でない方にも関係ある話がたくさんありました。
またマネージャーなどの管理職でない方にも、どのような技術が市場をひっくり返してきて、どう取り組めばよいのかというのはとても勉強になると思います。
特に大企業で働いている人には間違いなくおすすめですし、ベンチャー企業の方には逆にどのようなものが破壊的技術で自分たちの有利な点なのかを理解できると思うのでおすすめです。
今回はかなり簡単にはしょって書いてしまったので、ぜひ本を読んで破壊的イノベーションについて知っていただきたいです。