宮沢賢治の「風の又三郎」をモチーフにした曲 ヨルシカ「又三郎」
ヨルシカから久しぶりに新曲「又三郎」がリリースされました。
ヨルシカが今までハイペースで曲をリリースしていたのもありますが、前回が「春泥棒」なので5か月ぶりのリリースになります。
今回はその「又三郎」についてご紹介します。
「又三郎」とは
「又三郎」とは2021年6月7日に配信開始したヨルシカの新曲です。
公式HPの説明文によると「現代社会の閉塞感、不安、憂鬱さなどを打ち壊して欲しいという想いを風の子に託した疾走感溢れるナンバー」とのことです。
dアニメストアのCMにも起用されています。
宮沢賢治の「風の又三郎」がモチーフ
又三郎はその名の通り宮沢賢治の「風の又三郎」がモチーフになっています。
風の又三郎は1934年に発表された短編小説で、宮沢賢治が亡くなった次の年に発表されています。
あらすじ
ある風の強い日に小さな村の小学校に高田三郎という不思議な少年が転校してきました。
その独特の不思議さから村の子どもたちは三郎のことを風の神「風の又三郎」ではないかと思います。
子どもたちと三郎は交流を深め、出会ってから12日目の台風の日に三郎が転校してしまうまでの物語です。
子どもと三郎の交流は現実での出来事とファンタジーのような部分が混ざっています。
例えば三郎と遊びに行った子どもが深い霧の中で強風に吹かれて気を失ったときに、マントを身につけて飛び回る三郎の幻を観たりします。
このような現実と不思議が混ざりあっているのが風の又三郎の魅力のひとつです。
また転校生の三郎と、風の神の又三郎が同一人物か最後まで分かりません。
ここもまた不思議を残して読者に想像を託すような構造になっています。
歌詞にも風の又三郎要素がたくさん
又三郎はアルバム「盗作」の時にあった既存の作品をモチーフにして曲を作る感じと似たような作りになっており、歌詞のいろいろなところに風の又三郎の要素があります。
特に面白いのは1番のサビと大サビの終わりに入る「どっどど どどうど」というコーラスです。
これは風の又三郎の中でも何度も出てくる「どっどど どどうど」という有名なフレーズで、作中に出てくる歌の歌詞です。
作品の一番最初もこの詩から始まります。
どっどど どどうど どどうど どどう
宮沢賢治 風の又三郎
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
どっどど どどうど どどうど どどう
また同じ歌の中には「青いくるみも吹きとばせ」「すっぱいかりんも吹きとばせ」というフレーズがあり、これらも又三郎の歌詞にも出てきます。
風の又三郎を知らない方でも「どっどど どどうど」のフレーズ自体は聞いたことがある方も多いと思いますが、それをコーラスに使っちゃうというところがn-bunaさんのすごいところですよね。
アニメーションは勝見拓矢さん
白と黒をベースにした特徴的なMVのアニメーションを担当されたのは映像作家の勝見拓矢さんです。
勝見拓矢さんは同じくヨルシカの「春ひさぎ」のMVでもアニメーションを担当されています。
確かに同じような雰囲気を感じますね。
シンプルな絵で枚数も少なめのシンプルなアニメーションにもかかわらず、なにか語り掛けてくるような雰囲気がとても魅力的です。
特に2番の「風を待っていたんだ」のところ(1:55くらいから)で屈伸している2人が好きです。
又三郎のMVでは風の又三郎が1934年の作品ということもあって、ちょっとレトロな感じの雰囲気がぴったりだと思います。
まとめ
又三郎はその込められた想いの通り、現代のもやもやしたものを打ち壊してくれるような曲だと思います。
また又三郎から風の又三郎に興味を持った方は、著作権の期間が過ぎて今はネットでも無料で読めるようになっているのでぜひ読んでみてください。